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満ちていく部屋

始めて入ったときから、それだけがポツンと置かれていた。

青味がかった液体が並々と注がれた球体。

中にはどこかの惑星に住むらしい半透明の生物がフヨフヨと浮いている。

傘のような頭から細い足がいくつも伸びている不思議な生き物だ。

調べたら、リフレス・ゼリーと呼ばれる観賞用ルームグッズのようだった。

部屋には、他に何も無い。

無機質なベーシック・ルームの真ん中で、それだけが光に照らされ輝いていた。

そして彼はよく、一人でじっとそれを見つめていた。

 

水生生物が好きなのだろうか。

そう考えた私は、日々のお礼も兼ねてアクア・ボックスを買ってきた。

四角い水槽の中を小さいが色とりどりの魚が泳ぐ、その手の事に疎い私の目も楽しませてくれる一品だ。

彼は笑ってありがとうと言うと、リフレス・ゼリーの横にそれを置いた。

 

その後も私は、彼の気を引きそうなルームグッズを見つけては彼の部屋に持って行った。

シーアネモネ、シェルライト、ディープファウンテン、ブルーライト……

寂しかった彼の部屋が、一気に賑やかになる。

物悲しく感じられたのが嘘のようだ。

しかし色々な物に囲まれても、彼はやはりリフレス・ゼリーを眺めていた。

 

そんなある日、水のグッズで溢れた部屋に、アルがソファを持ってきた。

暗めの色合いが周囲によく馴染む、二~三人がけのシックなソファだ。

彼はとても喜んで、リフレス・ゼリーが良く見える位置にソファを置いた。

数日後にはソファに合うテーブルも購入したらしく、私とアルの三人でお茶会をしようと誘ってくれた。

お茶を振る舞い談笑する彼はとても楽しそうで。

今では物に囲まれたリフレス・ゼリーも、心なしか温かく見えた。