エティ話の続き

僕を見て泣く青年は、写真で見た生前の父にそっくりだったんだ。

 

自らが生まれた時間軸を捨て過去に飛ぶことを望んだエティアンだが、
彼自身に時空を飛び越える能力は無い。
仮に予想通りの方法で目的を失ったとしても、元の居場所に帰る事はもちろんできない。
本当の事を誰かに打ち明ける事も出来ず、祖父から借りた嘘の名前のまま、
色々なものを捨ててまでたどり着いた時間軸で、からっぽの人生を過ごす事になるだろう。

けれども、もしも、もしも彼が、
アークスとしての自分と出会うことが出来たら。
本来はこの時間軸から永遠に姿を消すはずだった少年と、出会うことが出来たら。

きっとエティアンは涙する。
それが本当に幸せにつながっているかどうかは、彼には判断できないけれど。
それでも変わらず生き続ける事を選んだ自分の姿に、涙を流すだろう。

そして精一杯の祝福を、兄妹へ与えるに違いない。
自分の分まで幸せになってほしいと、心から願いながら。



けれども、そんな未来は恐らく来ない。
両親の命を救うため過去へ戻った無邪気でストイックな少年が、
赤の他人であるはずの自分をかばって死ぬ父の背を見た彼が、
孤独な母へ新たな幸せを提供するなんて。
そんな未来は、恐らく来ない。

来たとすれば、彼を襲う絶望は一体どれほどのものか。
その末に、一体どんな衝動に走るのか。
それを語るのは、今は控えるとしよう。

 

***

なんて他の子とは毛色の違う設定をつけられた彼は、
初期のストーリーの安藤へのアンチテーゼ。
ちなみに本名はアマデウス。

基本的に「彼が過去に戻ることは宇宙の歴史として既に決まっている事」という設定で書いている。
よって過去に戻ってアークスとなるエティアンと、アークスになる前に過去へ行くアマデウスが、
「互いにアークスとして」出会う事はまずない。
両親が死に、幼い自分も消えた世界を生きる彼は、
さぞ陰鬱で殺伐としたニヒルな青年へと成長する事だろう。

けれども、もしも、
何らかの方法でアマデウスが過去へ戻る歴史を改変し、二人が出会うことが出来たなら。
歴史が書き換えられ未来が変わり、エティアンの存在は完全に消滅すると良い。
両親を助ける事はできなかったけれど、
前を向いて未来を見据え、己の意思で歩き始める自分を見届けたとき……
彼の物語は、終わるのだ。